心不全について一人でも多くの方にわかっていただきたい!
日本心不全ネットワーク理事長の佐藤がシリーズでお送りします。
ぜひ、見ていただき多くの方に心不全の理解を深めていただきたいと思っています。特に新型コロナの影響で医療機関にかかるのをためらってしまうことも起こり始めています。早期に対応することが大切な心不全ですぜひ、このシリーズを参考に気になることがあれば医療機関を早めに受診してください!お願い致します。
ご質問あればネットワークのお問い合わせフォームを利用してご質問くださいそれぞれのご質問に丁寧にお答えさせていただきます。
心不全を発症したことのある患者さんから、当団体(旧ATTEND研究会を含む)宛にいただいたメールからのメッセージをまとめてみました。
是非、急性心不全のきっかけとなる生の患者さんの声を参考にしてください。
患者さんからの言葉をそのままに掲載してありますが、一部、理解し易い様にアレンジした部分がありますことをご了承ください。
そして、そのアドバイスに関して、当団体からのコメントも付記しました。参考にしていただければ幸いです。
Aさんから (こんな時心不全かも!! 心不全患者さんからのアドバイス)
なかなか気がつかない気温の変化などによって、徐々に徐々に体が冷えて行き、心不全の状態を発症。エアコンなどの温度変化ではなく、天候による気温の変化が多い。
こういったときは、暑いお風呂に入ることで数分のうちに治る。暑い室内に入れば10分程度で治る。
この患者さんは、気温が少しでもさがってくると心不全症状がでるとのこと。
具体的に、この患者さんの心不全症状は明らかではありませんが、おそらく軽い息切れが出てくるのだろうと推測されます。
では、何故、気温の変化が心不全症状発現に関係するのでしょうか?
心臓病の発症と気温や気候の関係については古くから様々な研究が行われていて、やはり寒い冬になると心臓病は発症しやすい様です。
しかし、急性心不全と気温との関係については、あまり検討されていません。数少ない検討の中で、イスラエルの急性心不全で入院した患者さんを対象とした報告( J Card Fail 12:114-119, 2006)をご紹介します。
12月から3月までの時期に夜の気温が低いほど心不全の発症が多く、特に5度以下になるとその発症が増えることが分かりました。この研究での温度変化は、1日の温度変化で検討しているため、温度そのものの変化がなんらかの影響を与えていることを示唆しています。
しかも、寒い日に入院した患者さんほど6ヶ月間の死亡率が高かったそうです。
この理由は、気温が下がることで末端の血管が縮んで、血圧が上がり、心臓に負担がかかるためと考えられます。この背景には、心臓の働きを活発にする交感神経の活動性が高まることが関係しているのですが、この交感神経の活動性が亢進しすぎると心臓に悪さをすることが知られており、死亡率にも関係してきます。また、気温以外に冬の時期は、インフルエンザ等の感染症を契機に急性心不全を発症することが多いことも報告されていますので、注意が必要です。
この患者さんのもうひとつ貴重な体験は、”体を温めると楽になる”ということです。この患者の場合、これだけの短い時間で改善することに関しては心不全症状をしっかりと確認しないとなんともいえませんが、心不全の治療方法として、温泉あるいはサウナを利用した“温熱療法”という方法もあり、心不全の発症予防にもつながる可能性があります。もちろん、適切な暖め方があるので、詳細は心臓専門の先生にお聞きください。
このように、ひとりの患者さんの貴重な体験からいろいろな重要な心不全の起こる原因や予防法のヒントが隠れているのです。
Bさんから (こんな時心不全かも!! 心不全患者さんからのアドバイス)
そんなこんなで、後で数えてみると、夏休み40日のうち実に半分の20日の昼食を家で食べてなかった。当然のことながら、体にも無理が来ていたのである。
夏休みの終わり頃、なにげに体重計に乗った。春から比べて2kgほど増えていた。
今まではどちらかというと夏やせしていた。
また、やっとこのくらいの体重になってきたということもあり喜んでいた。
しかし、何となく辛どく、顔や足が重たい感じがあった。
新学期の初日、家に帰って着替えをするときに驚いた。
靴下の模様が足にクッキリついているのである。しかも、ゴムのところで見事に括れている。
足を指で押すと、指の形が残る。
心臓の機能が低下すると血液の流れが悪くなります。特に心臓の右側の部屋の機能が低下する、あるいは、負担がかかってくると、心臓に血液を戻りにくくなるので足がむくんだり、首の血管(静脈)が腫れたり、さらに悪くなると肝臓が腫れたり、お腹に水が貯まったりします。
このようなことが起こる引き金としてBさんのように疲労があります。
多くの方は、心臓の機能がもともと低下している慢性心不全の状態の方がこのような症状を起こすことが多いのですが、心不全で治療を受けられている方は是非注意していただきたいと思います。
そして、もうひとつ大変重要な心不全の症状が、Bさんの経験談からの中にあります。それは体重です。食欲がない、あるいはそんなに食べていないのに体重が増えてくる場合、特に、足のむくみがある場合は、是非、心臓や腎臓が大丈夫かを医療機関にかかって検査を受けてください。
Cさんから (母は苦しんだのでしょうか?)
急生心不全で、母を亡くしました。
夜だったため、見取ることが出来ませんでした。 母は苦しんだのでしょうか?
苦しまない心不全はないと思います。
ただし、その苦しむ時間の長さはどのような急性心不全かにより異なります。
呼吸困難が強く数時間以内に意識が遠のき死に至るものから、呼吸はそれほど苦しくないければどもむくみが強くて動けないというものもあります。
前者の場合は、急激に進行するため一時的に苦しむものの、短時間で意識が遠のくので苦しいという自覚は少ないかもしれません。
一方、慢性的に徐々くる場合は、何日も動けず辛い思いを強いられるかもしれません。
40代女性の旦那様から (肺水腫ってしっていますか?)
43歳の妻が急性心不全にて亡くなりました。
胸水が少し見られること(半月ほど前に風邪をこじらせました)ふくらはぎが、腫れている事意外原因不明、慢性の病気ではなく突発的としか言いようが無いと言われました。
亡くなる寸前に大きく嘔吐するような症状をして瞬時に固まりました。
胸の水を吐きそうになり心臓に負担がかかった?(空気を吐いたきり吸いませんでした)ふくらはぎの、むくみは血管が詰まっており、其れが心臓に詰まった?の意見をマッサージ師から可能性として聞きました、このような事が原因と考えられるでしょうか?どうしても原因不明では諦めきれません、ご意見お願いいたします。
多くの急性心不全の患者さんは、呼吸困難を訴えます。
ATTEND研究でも、研究レポートにあるように約7割の方が呼吸困難を訴えています。これは、肺から心臓への血液の流れが悪くなり、もともとスポンジのような臓器である肺が血液を溜め込んでしまうというものです。
これを肺水腫といいます。
肺がうまく働かないわけですから、酸素がうまく取り込めなくなり、苦しくなるのです。これが、電撃的に急にくる場合があり、重症な場合は1時間以内に死に至ることもあります。このような急性心不全もよる肺水腫は、高血圧をわずらっていて治療を十分にうけられていないときに起こりやすいと考えられています。
ご質問の患者さんですが、入院する前から胸水があり、ふくらはぎの腫れがあったことから以前から慢性心不全があって、それが悪化して上述した肺水腫を起こしたと考えられます。ただ、ふくらはぎの腫れが右か左一方で、突然呼吸困難や胸痛を訴えるような場合は、足の静脈から血の塊(血栓といいます)が血流にのって肺の血管につまり死に至るということがあります。これは、肺血栓塞栓症といわれるもので、背景に、安静が長く動いていなかったり、癌があったり、あるいは、血液が固まりやすい病気がある場合に起こります。
50代女性の旦那様から (急性心不全で入院された患者様のご家族が感じた心不全の予兆は?)
心アミロイドーシス(アミロイドと呼ばれる線維状の異常蛋白が心臓に沈着して機能障害を起こす病気)による心不全の急性増悪で、はじめて入院された患者さんの奥様の話。
「入院は家族にとっては寝耳に水に近かったです。 足のむくみを気にしたことはないし、家では安静にしているし、一緒に出かけることが多いわけではないので、主人が息切れしているのに、自分から気付くということはありませんでした。ただ主人から、最近、息が切れる、倦怠感が強いという話は聞いていました。その主人からの訴えが、家族にとっては唯一のサインであったように思います」
このように心不全を初めて起こされて入院した場合は、まさか自分の家族が心不全になるなんて思っていないのが普通ですので、傍から見た症状で気付くということは非常に難しいでしょう。
でも、本人の訴えが唯一の手掛かりであったというのは、そんなに珍しいことではないかもしれません。やはり家族が何かしらの症状を訴えたら、きちんと気に掛けてあげることが大切ということでしょう。
実際、この患者さんは、2ヶ月前から坂道階段歩行の息切れ、1ヶ月前からのむくみ、その後徐々に平地歩行での息切れが増悪して入院されています。
家族の方も、これらの症状が「心不全かもしれない?」と考える知識をもっていることが大切です。
65代男性の奥様から (急性心不全で入院された患者様のご家族が感じた心不全の予兆は?)
僧房弁閉鎖不全(心臓内にある僧房弁という弁がうまく閉じないために血液が本来は、左室から全身にいくべきところが、左室から左房に逆流してしまう状態)による慢性心不全の悪化で入院された患者さんの奥様の話。
「主人は、入院するのが怖く、また我慢強いので、自分から苦しいとは言わないんです。でも、いままで何回も入院をしていますが、大体、入院する数日前は、横になりたくないようです。
調子のいいときは、横になってテレビをみながらゴロゴロしているのですが、座ってテレビを見るようになってくるとまた心不全が悪くなったかなと最近、思うようになりました」
心不全の患者さんは、悪くなるとこの患者さんのように横になると苦しくなります。
重力の関係で、横になると心臓に血液が戻り易くなる。しかし、もどってきた血液を、肺を経由して全身にまた送り出すには、心臓が対応しきれない状態にあると肺に血液が滞って息苦しくなります。
この状態からくる息苦しさに、“発作性夜間呼吸困難”という症状があります。これは、夜、寝ると1-2時間して、なんとなく寝苦しくて目が覚める、そして起き上がると少し楽になるという症状を指します。
これが、さらに悪化すると“起坐呼吸”といって、横になれず、座っていても苦しくてつらいという状態になります。
このような状態になると、ほとんどの場合、入院治療が必要になります。
このように、ご家族の方も、自分たちは心不全をおこすことはないだろうと決め付けないで、心不全というものの症状を理解していることは非常に大切なことだと思います。
お互いに注意しあうことで、より早く病院を受診し、入院を回避できたり、簡単な治療で済むことがあるかもしれません。
自分は、心不全とは無縁と思わず、是非、心不全による症状を理解しておいてください。
その知識があれば、これからますます増えてくると考えられている心不全から大切な家族を救うことができるのですから。
医療者向けの新聞に掲載された情報です
一般の方には、むずかしいと思いますが、医療従事者の中でも急性心不全は重要な課題になっています!
下記ページをご覧ください。
特集 急性心不全の初期治療に必要なリスク層別化
MEDICAMENT NEWS 第2207号 2015年9月15日
上記の心不全症状以外の方へ
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